鎧袖一触

[#5字下げ]三 鎧袖一触[#「三 鎧袖一触」は中見出し]

 日本のやくざ[#「やくざ」に傍点]は親分|乾児《こぶん》の間に仁義があって、親分は乾児を引立て、乾児は親分を立て、それで、だんだんに勢力を得、同輩同職に対しては、競争する。 しかるに米国のギャングは、親分乾児の間に仁義がなく、乾児は親分を凌ぐことによって自分の勢力を張り、同輩同職に対して競争するばかりか、しろうと[#「しろうと」に傍点]衆に対しても、悪辣な行為をする。 日本の夫《そ》れは大家族主義的、相互扶助的であるが、米国の夫れは、利己主義的、弱肉強食的である。 米国ギャングのその例は、有名な「暗黒の王」アル・カポネの所業によって立証される。 カポネをギャング界に送り出したのは紐育《ニューヨーク》の親分エールで、「カポネ、おめえ、市俄古《シカゴ》の親分コロジモのところへ行って、用心棒にでもなりな」と紹介した。それは一九二〇年一月のことであった。 カポネは、そこでコロジモのところへ行き、厄介になったところ、その年の三月に、自分の自動車を、停車中のタキシーにぶっつけた上、拳銃で、その運転手を嚇《おど》したという廉《かど》によって拘引されたのを、コロジモが貰い下げてくれた。 ところが同じ年の五月十一日には、その恩ある親分のコロジモを、カポネは、「鉛の犠牲」にしたのであった。すなわち、機関銃で射殺したのであった。 この日コロジモは、自分の経営している南ワパッシ街二一二六番の料理店で、いいご機嫌で酒をのんでいた。その時、窓から機関銃の筒口が出て、タ、タ、タ……それで、片付いた。コロジモは天国へ行ったのである。

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